ぎのわん漫歩会

漢字を忘れない方法　　　

パソコンを習得したのは６０代半ばだっ
たが、たちまちにして、その便利さに酔
いしれていった。そして、パソコンにの
めり込めばのめり込むほどに、直接、自
分の手を使って字を書く作業が激減し
た。

そんなある日、直筆
の手紙を書く機会があ
って、書いてみたら、
いくつか忘れた漢字が
出てきた。漢字の筆記
には自信があつただけ
に大変な衝撃だった。
しかし、その原因が明らかにパソコンに
あることに気付くのに、さほどの時間は
かからなかつた。

パソコン習得以来の私は、パソコンの
機能を主に趣味の「古文」と「漢文」の
学習に活用していた。「古文」ならばプ
リンターによって、本の中の古文そのも
のを紙に印刷していく。「漢文」ならば、
本の中の「漢文体」の箇所を目でなぞり
ながら隣接した「読み下し文」のほうを
印刷していく。その要領で今まで親しん
できた「古文」や「漢文」の古典を、次
々と印刷して楽しんだ。

幸い、間もなく私なりの「漢字を忘れ
ない方法」を発見した。それは、従来の
漢文の学習法を変えさえすれば簡単に解
決することだと気付いたのである。

現在の私の漢文の学習方法は、本の中
の「漢文体」のほうを筆ペンで紙に書い
ていく。字体は正確な楷書を用い、同時
に習字の学習も兼ねている。漢文の実力
は、なかなか前進しないが、その方法で、
忘れかけていた漢字が徐々によみがえつ
てきた。

(西原町、鍼灸師)
具志堅輿○
沖縄タイムスより