2013年10月02日
忍び寄る超格差社会
忍び寄る超格差社会
もりなが・たくろう
57年東京生まれ。
東京大卒。
日本専売公社(現日本たばこ産業)入社、
三和総合研究所などを経て現職。
‐森永卓郎独協大教授
消費税増税が決まった。
これで昨年11月から始まっ
た驚異的な景気拡大は頓挫
することになるだろう。
来年度の物価は、消費税
率引き上げの影響で2%、
金融緩和の影響で1%上昇
する。その一方で、賃金は
ほとんど増えず、年金も物
価スライドの積み残しがあ
るので、まったく増えない。
そうなれば景気は失速す
る。
安倍晋三首相も、もとも
と消費税を上げる気はなか
ったはずだ。現に、アベノ
ミクスの生みの親である浜
田宏一内閣官房参与は、引
き上げの先送りを主張して
いる。また、消費税率引き
上げの必要性もない。景気
拡大で今年4~6月期の税
収は前年比5%も増えてお
り、年度末に入ってくる法
人税を加えれば、本年度の
税収は劇的に増えると見込
まれるからだ。
しかし、消費税増税を悲
願とする財務省の説得で、
安倍首相は引き上げを決断
した。1997年に消費税
率を引き上げて、日本経済
を15年間デフレに追い込ん
だ橋本龍太郎元首相の二の
舞いだ。
橋本元首相の場合は、消
費税率を2%引き上げ、サ
ラリーマン本人の医療費負
担を2割から3割に引き上
げ、特別減税を廃止するこ
とで、総額9兆円の負担増
を国民に課した。それが、
デフレヘの転落の原因とな
った。今回の増税規模は約
8兆円だから、その時の状
況にほぽ近いのである。
もちろん、安倍首相自身
も、消費税率引き上げが強
烈なデフレ効果を持つこと
は十分認識しているだろ
う。だから消費税引き上げ
の2%分、5兆円の景気対
策束を行うことにした。ただ、
緊急予算の場合は財務省の
査定が甘くなり、無駄な予
算が使われがちになる。無
駄に使うのだから、当然経
済効果も小さくなる。
一方、日銀の黒田東彦総
裁も消費税引き上げで、景
気が失速した場合はさらな
る金融緩和で対抗すると表
明している。「異次元の金
融緩和」を超える緩和を行
うのだ。
消費税の引き上げ、財政
出動、金融緩和の3点セッ
卜の政策が何をもたらすの
かを予測することは容易で
はない。
車の運転でいうと、消費
税増税という急ブレーキを
踏みながら、財政出動と金
融緩和という急アクセルを
踏むことになるからだ。 通
常行わない危険な運転をし
た時、車がどのような動き
をするのかを予測するのは
困難だろう。今後の日本経
済は、バブルになっていく
可能性もあるし、景気が失
速してデフレに逆戻りする
可能性もある。
私はデフレに逆戻りする
可能性の方高いと思う。
日銀が今の異次元緩和を上
回る超異次元緩和に踏み切
る勇気はないと思うから
だ。
アベノミクスは、戦後最
大の経済政策の実験だっ
た。そして、それは見事に
的中した。そのまま景気拡
大を追求していけば、アベ
ノミクスが本来目指してい
た経済の活性化と国民生活
の向上と財政再建の一体的
達成が実現しただろう。
それを財務官僚による消
費税引き上げのごり押しが
壊してしまった。
今後、アベノミクスの第
3の矢、すなわち規制緩和
・市場原理主義化政策が実
行に移されていく。パイが
増えない中での市場原理の
強化は格差拡大をもたら
す。
これからの日本は、これ
までの常識を覆す超格差社
会へと変貌していくだろ
う。消費税増税はその第一
歩になるのだ。
沖縄タイムスより
もりなが・たくろう
57年東京生まれ。
東京大卒。
日本専売公社(現日本たばこ産業)入社、
三和総合研究所などを経て現職。
‐森永卓郎独協大教授
消費税増税が決まった。
これで昨年11月から始まっ
た驚異的な景気拡大は頓挫
することになるだろう。
来年度の物価は、消費税
率引き上げの影響で2%、
金融緩和の影響で1%上昇
する。その一方で、賃金は
ほとんど増えず、年金も物
価スライドの積み残しがあ
るので、まったく増えない。
そうなれば景気は失速す
る。
安倍晋三首相も、もとも
と消費税を上げる気はなか
ったはずだ。現に、アベノ
ミクスの生みの親である浜
田宏一内閣官房参与は、引
き上げの先送りを主張して
いる。また、消費税率引き
上げの必要性もない。景気
拡大で今年4~6月期の税
収は前年比5%も増えてお
り、年度末に入ってくる法
人税を加えれば、本年度の
税収は劇的に増えると見込
まれるからだ。
しかし、消費税増税を悲
願とする財務省の説得で、
安倍首相は引き上げを決断
した。1997年に消費税
率を引き上げて、日本経済
を15年間デフレに追い込ん
だ橋本龍太郎元首相の二の
舞いだ。
橋本元首相の場合は、消
費税率を2%引き上げ、サ
ラリーマン本人の医療費負
担を2割から3割に引き上
げ、特別減税を廃止するこ
とで、総額9兆円の負担増
を国民に課した。それが、
デフレヘの転落の原因とな
った。今回の増税規模は約
8兆円だから、その時の状
況にほぽ近いのである。
もちろん、安倍首相自身
も、消費税率引き上げが強
烈なデフレ効果を持つこと
は十分認識しているだろ
う。だから消費税引き上げ
の2%分、5兆円の景気対
策束を行うことにした。ただ、
緊急予算の場合は財務省の
査定が甘くなり、無駄な予
算が使われがちになる。無
駄に使うのだから、当然経
済効果も小さくなる。
一方、日銀の黒田東彦総
裁も消費税引き上げで、景
気が失速した場合はさらな
る金融緩和で対抗すると表
明している。「異次元の金
融緩和」を超える緩和を行
うのだ。
消費税の引き上げ、財政
出動、金融緩和の3点セッ
卜の政策が何をもたらすの
かを予測することは容易で
はない。
車の運転でいうと、消費
税増税という急ブレーキを
踏みながら、財政出動と金
融緩和という急アクセルを
踏むことになるからだ。 通
常行わない危険な運転をし
た時、車がどのような動き
をするのかを予測するのは
困難だろう。今後の日本経
済は、バブルになっていく
可能性もあるし、景気が失
速してデフレに逆戻りする
可能性もある。
私はデフレに逆戻りする
可能性の方高いと思う。
日銀が今の異次元緩和を上
回る超異次元緩和に踏み切
る勇気はないと思うから
だ。
アベノミクスは、戦後最
大の経済政策の実験だっ
た。そして、それは見事に
的中した。そのまま景気拡
大を追求していけば、アベ
ノミクスが本来目指してい
た経済の活性化と国民生活
の向上と財政再建の一体的
達成が実現しただろう。
それを財務官僚による消
費税引き上げのごり押しが
壊してしまった。
今後、アベノミクスの第
3の矢、すなわち規制緩和
・市場原理主義化政策が実
行に移されていく。パイが
増えない中での市場原理の
強化は格差拡大をもたら
す。
これからの日本は、これ
までの常識を覆す超格差社
会へと変貌していくだろ
う。消費税増税はその第一
歩になるのだ。
沖縄タイムスより
Posted by ばるさん at 13:13
│沖縄タイムス誌より